続バーンハナの軌跡13

【希望】
準備が整った。
今から研修制度の充実、そして遣り甲斐ある職場を目指す。
そう動き出した矢先、思わぬ話が持ち上がった。
それはスタッフからの相談だった。
店舗スタッフの面談の時、
一人のスタッフが言った。
「辞めたい」
どうしてか理由を聞くと意外な言葉が帰って来た。
「この仕事、給料は良いけど旦那に言えないんです。。。。。」
その言葉で、周りに居たスタッフも口火を切った。
「私も同じく家族に言えない」
「彼女に言えない」
「彼氏にとめられているんです。。。。」
なんと、半数以上のスタッフが同じような気持ちだったことが判った。
人の体をさわってお金を儲けるのが恥ずかしい。
マッサージと言っても資格が無いから無資格のもぐり。。。。
そう、実際に保健所からの指導で、資格者でないとマッサージと唱うことが出来なかった。
数人の有資格者はいたが、実際は整体であったり、ボディケアと名を変えていた。
治療目的でなくリフレッシュ目的ならば問題がなかったからだった。
そういった事情とタイミングも重なり、皆、自分の立場がはっきりしない状態だった。
そんな気持ちがこの仕事の遣り甲斐どころか、不安を増幅させたのだろう。
気持ちを聞くまで、全くわからなかった。本当にすまない。。。
なんとか皆に誇りを持てる資格を取らしてやれないものなのか。。。。
それ以降、その事ばかり考えるようになった。
【きっかけ】
資格。
資格と考えると、結局ぶち当たるのは国家資格の壁だった。
4年通って1000万円は到底無理なことだった。
そんな矢先、営業先でバリをテーマにした施設を造る話が持ち上がった。
話を聞くと業界初のバリ風の温浴施設を作ると言うことだった。
営業争いは熾烈な戦いとなった。
数十社の同業者が名乗りを挙げていた。
なんと言っても日本で初めての企画。
同業者にとっては今後の話題にのっかり、大きくなるチャンスだと考えていたことだろう。
条件は「整体」と「バリエステ」をすることだった。
整体はしていたが、バリエステなど経験も実績も無かった。
しかし無謀にも営業に行くことにした。
何か収穫が有るかもしれない。
契約してもらえなくても良いと思い、コンペに参加した。
コンペ会場には担当官が2人とオーナーが居ており、そこで企画書を見せる。
その結果また数社に絞られると言った勝ち抜きの内容だった。
私の番が来た。
作った企画書にはバリエステの経験は無いが、勉強して良いものを作り上げたいとだけ書いて
発表した。
一人の担当官から
「そんなんで本当に大丈夫なの?」
と、冷ややかな口調で言われた。
はい、でも経験がないんでそれしか言えません。
「他の業者さんはノウハウあると言ってますが、なぜノウハウの無い御社がここに来たんですか?」
ともう一人の担当官に言われた。
私はスタッフの自信と遣り甲斐を持たすため、資格が有るかをバリに行って見たい。
そして、資格が取れるならスタッフにとらせて、この仕事に誇りを持たせたい。
など、企画とは関係ない話で、もらった時間は終わってしまった。
思わず出た言葉だったが、海外で資格を見つけたいと自分で言った言葉に納得していた。
なんとか遣り甲斐のある資格をとらせてあげたい。。。
その事ばかりで頭の中が一杯だった。
それから1週間後、バリの温浴施設の担当官から採用の連絡が来た。。。。
不思議な気持ちだった。
~続く~