続バーンハナの軌跡②

(バーンハナスパ高槻本店)
【勤務が始まった】
就職が決まり、新たな気持ちで迎えた10月。
研修が始まった。
大がかりなものが始まると思い覚悟を決めて望んだ研修だったが、
Nさんが手順と押方を教えてくれただけで、たったの2時間程度の研修で終わってしまった。
「こんなんで良いんですか?」
と問いかけると
「僕もこれしか教わってないし、後は自分で何となく勉強しただけなんで」
と、歯切れの悪い言葉が帰って来た。
正直、こんなものをお客さんに出すのは心苦しい。
ましてやお金をもらって生活をしていくには何とも無様に感じた。
家に帰って、官足法の本を夢中で読んだ。
友人の足を借りて研究した。
そして次の日、お客さんに入ることになった。
初めてお客さんに入るのはどきどきしたなぁ~。
いまだに初めて入ったお客さんのことを覚えている。
一生懸命夢中で施術した。
痛い痛いと言っていたが、終わった後、労いの言葉をもらった時のあの満足感は
全ての疲れと緊張を一気に吹き飛ばしてくれた。
それ以来、無我夢中でお客さんと向き合い施術をした。
毎日に少しずつお客さんに指名をもらえるようになった。
1998年も終わりに近づいた頃には、指名をくれたお客さんだけであっという間に1日が過ぎていった。
【不満】
3ヶ月経った頃、Nさんからご飯に誘われた。
Nさんは出会った頃とは別人の様に暗い雰囲気が続いていたし、心配だったのでちょうど良かった。
仕事が終わり、サウナの1階の焼肉屋に行った。
Nさんは出された生ビールを一気に飲み干すと、私の方を見て静かに話し出した。
「実は俺、仕事辞めようと思う。」
え!
いきなり言われて戸惑った。
なんですか!
なんかあったんですか!
と聞くと
Nさんは
「俺はこの足裏マッサージの仕事が好きやし本当は辞めたくないんやけど、会社は何もサポートしてくれない。
店に必要な宣伝やポスターや備品もお願いしても全然返答がない!極めつけは施術のマニュアルなんて一切ないんやで!簡単な本だけ渡されたんや‼ こんなもんで何が出来るねん‼」
怒りが一気に頂点に達したかのように顔を真っ赤にして怒りだした。
「生ビールもう一杯!」
止めどなく溢れる不満は朝まで続いた。。
私はただただ聞いていた。
仕事が好きなのに、辞める決断をしなければならないぐらい追い詰められてたNさんが気の毒に感じた。
~続く~