続バーンハナの軌跡23

【本気のピンチ】
いったい何が起きてしまったのか。。。。。
状況を正確に把握できない程の動揺と先の見えないトンネルの中に取り残された、とてつもない不安が
襲ってきた。
どうなるのだろう。。。
Tさんがオーナーに会いに行ってから30分程経って戻ってきた。
「あきません」
先程の赤い顔が青ざめている。
いったい何があったんですか!
この半年間、打ち合わせを重ねてきたことや、開校費用で500万以上かかったこと。色々な苦労が一瞬で消え
て無くなっていくようだった。
Tさんは
「鵜川さん。すみません。彼を信じた私がバカでした。もう無理です。。。」
え。
なんて!
その言葉を聞いた瞬間、矛盾と怒りがTさんに向けて爆発してしまった。
無責任すぎる。
どう責任とってくれんや!!
何のためにこんなけ時間と金をついやしたと思ってるねん‼
金はかやしてもらうで‼
など
酷い言葉でTさんを罵ってしまった。
背中を落として去っていくTさんを見つめていると、怒りで沸騰した気持ちが徐々に冷めていくのを感じた。
そして、すっかり日が暮れた学校になるはずの部屋の中で一人やりきれない気持で落ちていった。
また振り出しやな。
何のためにここまでやって来たんやろ。
そや、明日皆来るんや。
タイまで来て、学校無いって言ったらどうなるんやろ。
もう会社も閉めなアカンやろな。
皆に費用返して、、、、
タイまで来て騙された俺が悪いんか。
悔しいなぁ。
あのオーナーしばき倒しに行ったろか。
もう絶対許さへんしな。
怒りが頂点に達したが、ここは日本じゃない。
知り合いに頼んでも助けてくれる人間はTさん以外誰も居ない。
そんなTさんを罵り、帰してしまった事を後悔した。
時間は刻々と過ぎていく。
もう皆に会わす顔がないなぁ。
このまま時間を過ぎるのを黙って待つしかないのだろうか。。。
今、自分に出来ることは何があるのだろう。
そう考え出したとき、ふとスパのオーナーに話をしに行こうと思った。
そして学校を作ろうと考えた事や、タイで気付いたことなど伝えようと思った。
幸いオーナーはこの施設に居ているようだ。
伝えたいことをポッケトタイ語の辞典から単語を抜き出し書き出した。
タイで感じたこと。
優しさ
温かさ
気遣い
日本のスタッフに体験させたい
マッサージの原点
相手の幸せを祈ること
などなど。
感じたことを全て書き出してオーナーに会いに行った。
事務所に入るとオーナーが座っていた。そしてこっちを見るなり目をそらした。
嫌がっているのがありありと伝わってくる。
そしてお前の話など聞いてたまるか。
そんな雰囲気を感じたが、思いきって書き出した単語をオーナーに見せながら話してみた。
聞いてください。。
タイで感じた思いを。。
たどたどしいタイ語で書き出した単語を見せながら何度も読んだ。
誠心誠意、間違わずに伝えようと必死で読んだ。
読んでいる打ちに何故か申し訳ない気持ちになってきた。
騙されたのは自分のはずなのに。。。。
腹が立つよりも、むしろ申し訳ない気持ちになるなんて不思議な気分だった。
初めは聴く気もない感じだったが、徐々に書き出した単語を一緒に読むように覗き込んできた。
何度も何度も同じ単語を読んでるうちに彼が微笑みだしたのを感じた。
すると彼は笑顔で微笑んだ後、電話をかけ始めた。
言葉は解らない。
でも、明らかに先程の嫌な雰囲気はなく、むしろ温かさを感じるようだった。
暫くすると、トラックが2台門から入ってきた。。。
その荷台には50人近くの人が乗っている。
そして一斉に学校の部屋に資材が運び込まれて行った。
慌てて見に行くと、工事が始まりだした。
~続く~