続バーンハナの軌跡22

【タイのスクール】
「準備は全て整いましたよ」
と、Tさんから連絡をもらった。
既に募集をしたときに10名のスタッフは集まっていた。
待ちに待った開校だ‼
胸の高まりを押さえつつも、隠しきれない嬉しさは何があっても許せる感じだった。
開校前、最後の打ち合わせをスパオーナーとするために皆よりも3日早くタイに行くことにした。
図面とパース、企画書を握りしめ、飛行機に乗り込んだ。
いよいよ始まるんだ。
開校までのタイの出来事を想いながら、希望と充実感で心は踊っていた。
行き慣れたバンコクまでの道のりがやけに長く感じた。
【打ち合わせ】
ドムアン空港に到着した。
季節外れの大雨にタクシー乗り場と付近の道路は大混乱。
やっと乗り込んだタクシーでホテルに着いた時は既に夜になっていた。
チェックインを済ませスクールの有るスパまで向かった。
スパに着くとTさんが出迎えてくれた。
「有り難うございます。
学校どんな感じになってますか。」
と問いかけると、
Tさんは
「まだ、工事始まってないみたいですね。」
と言った。
え!
大丈夫ですか?
と慌てるとTさんは
「大丈夫ですよ。タイはこんな感じですから~。明日から始まるでしょう」
と、笑顔で言ってくれたので、少し不安はあったものの明日、再度現場で落ち合うことにした。
【現場】
次の日、朝から現場に向かった。
しかし、現場には作業員一人いない状態だった。
学校になるはずの教室はコンクリートむき出しのままだ。
さすがにこれでは工事が間に合わないだろう。
後からやって来たTさんも少し慌てた様子だった。
「一度、オーナーに電話してみますね」
そう言って電話をしながら現場から離れていった。
暫くしてTさんが戻って来ると
「鵜川さん。まだ工事は始まってないけど、大丈夫と言っているので少し待ちましょう」
と言った。
本当に大丈夫だろうか。
10名のスタッフは明日の夕方には予定していたスクールにやって来てパーティをする予定になっている。
そう考えると、この状態は絶対間に合わないのではないだろうか。。。
居ても立ってもいれない状態だったが、待てど暮らせど工事は始まらない。
不安の中、時刻は夕方になりかけていた。
さすがにTさんも焦ってるようで、何度も電話をかけだした。
早口のタイ語。
口調が荒くなっている。
Tさんを見ていると不安と焦りで落ち着かない。
どういうことだろう。
このまま工事は始まらないのか。。。
不安と焦りはどんどん増すばかりだった。
顔を真っ赤にしながら電話で話しているTさんを見ながら不安は増幅していった。
【予感的中】
真っ赤な顔でTさんが言った。
「すみません。工事はしないそうです。」
え!
どういう意味ですか!
動揺は隠しきれない。。。
工事しないってどういう意味?
落ち着こうにも落ち着けない状態で頭が真っ白になっていると、Tさんは一呼吸置いて話し出した。
「工事は出来ないし、学校もしないと言っているんですよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ハンマーで頭を殴られた感じだった。。
予想だにしてない展開に言葉が無くなるとはこの事だ。
Tさんも怒りが頂点に達している様だった。
そしてオーナーに会いに行くと言ってこの場を離れていった。
残された私はただただ呆然とその場に立ち尽くすだけだった。
~続く~