感謝の心

仲の悪い嫁と姑がいました。

姑は病気がちでいつも機嫌が悪く
事あるごとに嫁をいびります。
「うちの嫁は要領が悪くて、怠け者で。。。。」
と、本人に聞こえる様に言うだけでなく
近所の人や親戚にも言いふらす。
夫は嫁の前では「お母さん言い過ぎじゃないか」とは言うものの
病気の母親の前に出ると口答え出来ない人です。
嫁は姑にいびられる度に
良い嫁になろうと努力しました。
しかし、どれだけ努力をしても
陰湿ないじめを止めない姑に次第に
恨みを募らせていきます。
遂にはいっそ姑が消えて無くなれば良いと
思うほどになりました。
そんな暗い思いをもつ自分に
嫁はまた苦しみました。
そこで、あるとき、信頼できる友達から紹介された
僧に会い、自分の悩みを打ち明けました。
するとその僧は、こう言いました。
「そうか、ではお前の望みをかなえてやろう
簡単なことだ。この薬を姑の食事に少しずつ混ぜるのだ。
すると、姑の体はだんだん弱まっていき、一月もすると
消えてなくなるだろう。」
嫁は驚きました。
「・・・・つまり、一月で死ぬと言うことですか?」
僧は平然としていました。
「人は皆、死に向かっておる。誰でも老衰する。
ただそれを早めるだけのことじゃ。」
「でも・・・・」
「ただし、この薬を使うにあたって一つ条件がある。
この薬を入れた食事は多少味が悪くなる。
姑に気持ち良く食べてもらうには、食事を出すごとに
なんでも良いから感謝の言葉を述べるのだ。」
「感謝の言葉、ですか?」
嫁は食事に薬を混ぜるより
姑に感謝の言葉を口にする方が難しい気がしました。
家に帰ると、姑のいつもの突き刺すような目が待っていました。
「どこで油を売っておったか、お前はいつも帰りが遅い
グズで要領が悪い。」
などと姑から罵声雑言を浴びせられました。
「申し訳ありません」
嫁は頭を畳につけて謝ると、台所に駆け込み、涙ながらに食事の
支度にとりかかりました。
そして、良心の呵責を覚えながらも、僧からもらった薬を少しだけ混ぜて
姑の前に出しました。
僧から言われたとおり、感謝の言葉を口にしなければなりません。
「お母さん・・・・」
「ふん、なんだい。また同じようなおかずか。
お前は料理が一向に上達せんの。」
「はい、有り難うございます」
「何?なんだって!」
「ありがとうございます」
「どういうことだ。」
私は本当に料理が下手です。ですから、お母さんが私の下手な料理を食べてくださる

だけで、有り難く思うのです。」
姑はちょっと不思議そうな顔をしましたが、黙って料理に箸をつけました。

~続きます~✴