バーンハナの軌跡17

【志事】 

正社員に戻ってしばらく経った冬の日。 

厳しい寒さに目を覚ますと、外は深々と雪が降り続き一面真っ白な状態だった。

道路は無くなり、景色が変わっていた。 

T君と私は配達業務が心配なため、慌ててトラックにチェーンを巻きに配送センターに向かった。 

雪は膝の高さまで積もっていたので歩いていくのも一苦労だった。 

道中、新聞配達のバイクが立ち往生している。 

遠目に見える東名高速道路はトラックが立ち往生している様だった。

後日談だがその年に降った雪は10年振りの大雪で高速道路は通行止めになり近所の人がボランティアで、

立ち往生している車の人におにぎりを振る舞ったことが話題となり、ニュースで取り上げられた

クリスマスイブの日だった。
やっとの思いでセンターに着くと、そこには理事長と専務と役員が懐中電灯を照らしてトラックの周りで 

作業をしていた。 

駆け寄って見に行くと、役員は全車両のタイヤにチェーンを巻いてくれていた。 

仕分け部隊のオバチャンが 

「理事長達、私らが来るずっと前からチェーンをつけてるみたいよ」と 
教えてくれた。 

正直有り難かった。 

理事長に 

「僕らがやりますよ」と声を掛けたら 

理事長は 

「これは我々の仕事だから、鵜川君達は休んでおいて。」と言った。 

私は 

「これは役員がする仕事じゃないでしょ~」 

と言ったら、 

「皆が安心して仕事が出来る環境を作るのが役目だで、これで良いんだわ。」 

と言った。

今までそんな考えが微塵もない私にとってカルチャーショックだった。 

知っている社長は皆偉そうだった。 

あごで社員を使い、自分は遊びに出掛けていた。 

【役割】 

仕事とは役割なんだと言うことを身をもって示してくれた役員を尊敬するようになった。 


すなわち自分自身で良いも悪いも、楽しくも、辛いくも出来ることを教えてもらった気がした。 

それ以来、配送先の給食のオバチャンに 

「お疲れ様~」 

「美味しいご飯を持ってきました~」 

と自信をもって伝えていけるようになった気がした。 

そして皆と気さくに話せるようになったとき、給食のオバチャン達の人気者になっていった。 

~続きは明日~ 

ありがとうございます