バーンハナの軌跡14
【Kパン復帰】
まもなくT君も病院から戻り、週明けから仕事に戻ることになった。
ダブルワークの夜の工場はしばらく休むことにした。
その夜、久し振りにT君と話をした。
私が寝込んでしまった事で負担を掛けたことを謝った。
彼は
「全然気にせんで下さい。」
「鵜川さんがダメになったら僕も困るんで。」
「ホモじゃないんですけど憧れてたって言うか、、、」
と、彼は少し照れた表情で言った。
私は嬉しい気持ちと、自分都合で彼を振り回した申し訳ない気持ちとで胸が一杯になった。
[T君だけは何があっても食わせないといけない。]
ごめんな。ごめんな。と心の中でずっと謝っていた。
【月曜日の朝】
週も開けて月曜日の朝4時にT君とKパンに向かった。
一週間ぶりの出勤だ。
配送ルート別に積み上げられた荷物を自分のトラックに積み込み配送に向かう。
配送センターには仕分け作業をしているグループが居た。
近所の主婦が6~8人グループで構成されているチームが仕分け部隊と呼ばれていた。
Kパンに働く人は7割が身体障害者だった為、仕分け部隊は取り分け目立っていた。
たまに話すことがあったのだが、その日は久々の出勤だった為、向こうから声を掛けてきた。
「身体大丈夫」
「辞めたかと思って心配してたんだわ~。何人か辞めていったん知ってるでね。」
とリーダー各のNさんが言った。
そして、
「これ持っていきん」
とKパンのパンが入ったビニール袋を渡された。
障害者が作ったパンなど旨いはずがないと決めつけていた。
あんな連中がまともに作れるはずがないとも思っていたからだ。
しかし今回は仕分け部隊からもらったと言うのもあったが、久し振りのパン。
ずっと500円生活だった為、甘いものが欲しかった。
トラックに乗り込み、配送の道中にビニール袋からパンを取り出した。
学校の売店用の(あんパン)だった。
目茶苦茶、美味しかった。
今まで食べたパンの中で一番美味しかった。。
一気に残りのパンも食べた。
ジャムパン
クリームパン
どれもが格別に美味しかった。
食べてる最中、知らずと涙が溢れてきた。
~続きます~