バーンハナの軌跡21
夜中に完成したチーズ蒸しパンをT君と一緒にトラックに積み込んだ。
いよいよ作戦開始。
期待と少しの不安を抱き、件数分を積む。
私のルートは保育園と幼稚園と小中学校を入れると19件。
T君のルートは22件。
ここの給食のオバチャン全員に行き渡るように数を数えた。
二人とも徹夜にも関わらず元気だったなぁ~
【反応はいかに】
この日は配送しながらオバチャン達への売り込みでいつもの倍以上の時間をかけての配達だった。
新商品の説明を興味津々で聞いてくれた。
配り終わり、この日の夕方T君と工場長と3人で報告会を開いた。
あっという間の1日、いや2日か。工場長は3日目でさすがに眠たそうだった。
今日はもうくたくただ。
明日は土曜日。
学校給食が休みなのでスーパー銭湯でゆっくり休んで吉報を待つことにしようと言うことになった。
【ニーズに応える】
週も開けて月曜日の朝、給食のオバチャンから早速に意外な言葉が帰って来た。
「鵜川君!あのもらったパンだけど、1日置いてから食べようと思ったら硬くなって食べにくいの」
え!マジですか!
「そうなのよ、私もよ~」
と、そこにいたオバチャングループ全員が同じ話になった。
時間が経ったら硬くなって美味しく無くなる。
そこまで実験せずに持って行った事を後悔した。
その日の報告会は全てその話題だった。
一から逆戻りか。。。。
【ピンチをチャンスに】
工場長はミーティング中、既に色々と試していると言い出した。
どうやら固くなることも視野にいれて考えてたらしい。
二つのパンの掛け合わせの配合を100種、作り方の工程をかえる方法を3種類程変える言った。
全部で900通りの実験をすると言い出した。
めげるどころか、更にやる気アップの工場長は頼もしかった。
今から1週間はかかるだろう。でも絶対に成功さそう。
3人は熱く語ってミーティングを終えた。
そして、その日の夕方から実験を開始した。
【実験結果】
試作は思ったより時間がかかった。
既に金曜日になっていた。
900種類から10種類に絞られたパンを日曜日の朝まで置いておくことにした。
硬くならず、しかも味が落ちなければ完成だ。
ここまでよくやったなぁ。
その頃には沢山の作業員の方々が手分けをして手伝ってくれていた。
3人で始めたプロジェクトだったが、何時しか沢山の方々が関わってくれていた。
嬉しかったなぁ~
思えば3人では900通りの実験は無理だったもんな。
T君と工場長と一緒に始めたプロジェクト。
このような形で皆が協力してくれたことが、一番の収穫だったと思った。